Poverty Footrpintとは??

今回はOxfamによるPoverty Footprint(以下PF)の取り組みについて紹介する。

PFはMNCsのビジネスが貧困層に及ぼす影響を、より広範に、より包括的に理解するための指針となるものだ。それはCSR調達などによるサプライチェーン上の社会的責任に限ったものではなく、以下の5つの要素を含む。

  • 製品の供給も含むバリューチェーン:製品サービスのバリューチェーンにおいて、企業が貧困層に対してどの程度富を生み出しているか、また影響を及ぼしているか。
  • マクロ経済へのインパクト:企業活動が税金や富の分配、雇用の創出を通してその社会のマクロ経済にどの程度の影響を与えているか。
  • 制度と政策:企業と政府や市民社会との連携が貧困層にどのように影響しているか
  • 環境対策の社会への影響:企業活動が現地に及ぼす環境に対する脆弱性の発見
  • 企業の製品開発やマーケティングが現地コミュニティの文化や健康、そして生活に欠かせない製品サービスを得るための能力にどう影響を及ぼすか。


PFは単に企業に対して、より厳しい社会的責任の水準を要求するのではない。PFは、企業にとって自身のビジネスが貧困層の見えないところで与えている影響を発見するための指針になるものなのだ。
例えば、UnileverがインドネシアでPFのパイロットテストを行った際、同社は把握している数の二倍の供給者を間接的に雇用していることを発見した。そして、今まで盲目になっていた貧困層での自身のビジネスの影響を知ることが、供給網の改善につなげることができた。環境戦略において、自身のサプライチェーン上の環境負荷を把握することで、改善点が見つかり、結果的にコスト削減などにつながったように、貧困層で行われる未知の経済活動に目を向けることが新たな機会の発見となるのだ。

企業がPFに取り組むメリットは以下の3つある。

  • 持続可能な発展と貧困削減への貢献度に関する、企業の説明責任と透明性の向上
  • ポジティブな影響を促進し、ネガティブな影響を解決することによって、自身のビジネスモデルの改善につながる
  • リサーチと分析の両方で、より多くのステークホルダーを巻き込んだリサーチプロセスにおける組織学習に参加する


ここからは考察が入るが、三つ目の組織学習への参加の点が非常に重要に思える。PFは貧困層とビジネスの関わり方に関して、絶えず学び続ける(Learning Journey)を歩むための指針となるのだ。Sengeは「学習する組織」の概念を提唱したことでも有名であるが、このPFは貧困について絶えず学習する組織にとってのツールでもあるのだ。Learning Journeyは共同学習と解決策の共創を通してイノベーションを可能にし、また新たな洞察を与える。

PFはこのLearning Journeyを歩みだすための最初の指針となる。ビジネスと貧困層の関わりについて学び続けることは、UnileverのようなMNCsがおかれた状況をシステム的にとらえることでさらに浮かび上がる。

Oxfamのようなパートナーと組むことで、図表の左下の負の循環から、右上の正の循環を歩むことができるようになる。これこそがSengeが唱える「持続可能性を学習する組織」であると言えるのではないか。
今回はOxfamのPoverty Footprintを取り上げた。この取り組みはBOPビジネスの文脈でも非常に重要なものであり、今後の動向にも注目していきたい。

  1. 2010年 11月 23日
  2. 2011年 5月 10日

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