包括的ビジネスとインパクト評価

今回は、包括的ビジネス(BOPビジネス)が生み出すインパクトの測定に関する記事の紹介です。インパクト評価は僕自身勉強中の内容で、理解が及んでいない部分もあるので、自分の整理もかねて以下の記事の和訳要約記事を書きました。(細かいニュアンス等はかなり意訳しているので、原文も参照してください)

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Impact Assessment Is Easy … If You Know Your Objectives

特定の包括的ビジネス(BOPビジネス)が生み出すインパクト評価をするにあたって、最も簡単な方法は「B Corporation」に登録してみることだ。しかし、インパクト評価の役割は何か、またベストプラクティスについて知りたいのであればこのまま読み進めてほしい。

私が社会セクターに入ってから10年以上、その活動が生み出すインパクト評価について絶えず議論してきた。当初私は、社会的なインパクトを効果的に測定することは不可能だと感じていた。しかし活動を続ける中で、エンジニアとしての背景を持っていた私には、全てを数値で測定することが可能だということが次第に理解できた。こうした経験と数百の本や講義などを通じて辿り着いた私なりの結論は、インパクト評価は簡単だということだ。ただ、大事なことは一つ。そのビジネスの目的を定めることである。

生み出したい変化、そのために用いる手順、そしてコストなどについて明確なビジョンを持っているならば、インパクトを測定して評価することは簡単だ。例えば、ビジネスのゴールが人々の人生を豊かにすることと定めてみるならば、収入、人間開発指数(HDI)、Physical Quality of Life Index(PQLI)、幸福度指数などが使えるだろう。またわざわざ国連の評価チームを雇う必要もない。オンラインサーベイなど様々な方法を使って自分たちで情報を集めることはできる。しかし、インパクト評価にあたって最も難しい点は、そのコストの高さである。詳細にインパクトが計測することが理想ではあるが、それには多くの費用が付いてくる。こうした方法に代替するよい手段を見つけるためには、「変化の法則」を開発するとよいだろう。各々の目的にしたがって、最小限の費用でできる効率的なインパクト評価の方法を見つけることができるだろう。これらの測定方法は最終的に生まれるインパクトを明らかにして、伝達可能な情報となる。(関連サイト参照)

包括的ビジネスのように市場ベースで行われるものに関して、B Labはインパクト評価のための方法と、そのB Corporationsという認証制度を確立させている。B CorpsはB Labによってそのビジネスが生み出す社会や環境に関するインパクトの正当性が認められたビジネスである。B Corpsは広範で透明性のある社会的環境的パフォーマンスを持っていることになる。

B Labの認証基準は、B Lab、デロイト、ロックフェラー財産、アキュメンファンドによって作られたImpact Reporting and Investment Standards(IRIS)と一致している。IRISは社会、環境、そして経済について評価を行っている。(Global Impact Investment Rating System GIIRSも参考)

普遍的なインパクト評価の指標を設けることは不可能だろう。人間のダイナミックスは測定方法という限られた指標を超越するものだ。しかし、そのビジネスやプロジェクトの目的を明確に定めることで、それに関連したインパクトの評価を行うことはできるということを理解することが重要だ。

こうしたインパクト評価とそれにあたっての目的の明確化をたすけるために、マッキンゼーは投資家、企業、その他の関係組織のために、Learning for Social Impactというサイトを立ち上げている。このサイトではベストプラクティス、ガイドライン、ツールキット、そして洞察と実践的な支援案などが共有されている。また、Foundation CenterはTools and Resources for Assessing Social Impact(TRASI)を開発し、社会的インパクトに関数する150以上の測定や分析方法を共有している。TRASIは社会的投資家、財団、NGOs、マイクロファイナンス機関などのアクターようにツールキットをまとめている。

社会的インパクトを計測するにあたり、明確な目的と戦略を持つことが重要だ。

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以上が記事の和訳要旨ですが、少し登場したインパクト評価に関する方法について整理します。


B Corporation と B Lab

B Corporationとは公益(Benefit)を生み出す企業(Company)として、B Labという認証団体から認証を得た企業のことです。これは米国発の社会的企業を対象に広まりつつある動きで、最新のB Corpのページを見てもまだ米国内で留まっている印象です。(日本語で紹介したブログもあったのでこちらも参考まで。) Web上で50個程の質問に応えることで、簡単に認証審査を受けることができるようです。認証にあたって、その基準となっているのが、次に紹介するImpact Reporting & Investment Standardです。


Impact Reporting & Investment Standard(IRIS)

IRISの基準は以下のようにまとめられています。(IRISの評価基準を参考)

    ORGANIZATION DESCRIPTION – そのビジネスのミッション、ビジネスモデル、展開地域などの指標
    PRODUCT DESCRIPTION – その製品サービスと、ターゲットとする市場に関する指標
    FINANCIAL PERFORMANCE – 一般的な金融指標
    OPERATIONAL IMPACT – 企業方針、雇用状況、環境パフォーマンスなどに関する指標
    PRODUCT IMPACT – 製品サービスのパフォーマンスとリーチに関する指標
    GLOSSARY – それぞれの指標の中で用いられる共通言語の定義

こうした基準に立って、企業パフォーマンスに関する指標を提示しています。IRISのサイトにそれぞれの指標に関するサンプルもあります。そして、このような基準に立って、企業のインパクト評価を行っているのが、B Labであり、最後に紹介するGlobal Impact Investment Rating Systemです。


Global Impact Investment Rating System (GIIRS)
社会的リターンを目的と行われる投資、つまりインパクトインベストメントが投資する投資先を格付けする仕組みです。前述したIRIS基準となる指標に基づいて企業を評価し、投資の判断を行うのです。これもHPにサンプルが載っていますが、集まった指標となる情報から、企業を説明責任、雇用、消費者、コミュニティ、環境の点から評価しています。

このように、今回はインパクト評価についてまとめてみたのですが、今回取り上げたものはどちらかというと企業そのものの評価という意味でのインパクト評価になるのかなと思います。記事の中でも登場するように、インパクト評価に際してはその目的を明確にすることが重要なのだと理解しています。他にもインパクト評価に関するものはたくさんあるので(例えば記事にも出てきたこちらこちら)、今後も、こうしたインパクト評価に関する記事を取り上げていきたいと思います。

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